ショールーム巡り「パナソニック編」
クリナップ、LIXIL、タカラスタンダードと来て、第四回はパナソニックのショールームです。ネット上の前評判では、「パナソニック=お洒落だけど高い」ということでしたが、実際にこの目で確かめてきました。
目次
家電メーカーとしての技術が随所に見られる
パナソニックの前評判は「オシャレ」が一番多かったので、機能重視の私としてはあまり興味が湧いていませんでした。しかし実際に見てみると、素晴らしいの一言でした。
まず、IHヒーターとキッチントップの段差がCD一枚分しかないというのがとても良かったです。通常のキッチンと僅か数mmの差なのですが、この段差であれば拭き掃除で隙間の汚れが取れにくいということがなさそうです。
このIH周りには素晴らしい点がいくつもありました。IHを通常の三角配置ではなく横一列に配置することで、IHの手前に皿などが置けるよう空間を広く取っている点や、手入れの面倒な魚焼きグリルを無くした点等、他とは一線を画した仕様です。
キッチントップの素材については、パナソニックは「有機ガラス系新素材」を選択できます。この有機ガラス系素材というのがパナソニックが材料では売りにしている商品で、洗面台のシンクにも、トイレにも使われています。特にトイレが有名なのですが、詳しく調べて見ると意外と化学的に弱そうな一面もあります。
有機化合物がベースなので柑橘系やアルコールを含む洗剤、酸性・アルカリ性洗剤、重曹、消臭剤等が使用不可能という注意書きがあります。おそらくトイレ、洗面台、キッチンカウンターで有機ガラス系新素材の中身は異なると思いますが、もしトイレ以外でもこれらの洗剤が使用不可能となれば、柑橘系、アルコール、重曹が禁止というのは結構問題な気もします。店員さんに聞いておけば良かったのですが、忘れていました。
ネット上の口コミでは「パナソニックのキッチンシンクはエポキシ樹脂」とありましたが、ホームページ上に目立った宣伝文句はなく、これも店員さんに聞き忘れたので真偽の程はわかりません。今回は聞き忘れが多いです・・・。
これらの素材のことはパナソニックのホームページのどこかに書いてあるのかもしれませんが、残念ながら見つけることが出来ませんでした。
レンジフードも「ほっとくリーンフード」という10年間ファンの清掃が不要なもので、クリナップの「洗エールレンジフード」に匹敵するものです(そもそもパナソニックはクリナップのOEM元なので、当然といえば当然ですが)。
お風呂は「美容」を焦点に
続いてお風呂ですが、こちらの売りは「酸素美泡湯」と「エステケアシャワー」です。
酸素美泡湯は感覚的には温泉施設にある炭酸泉と似ていますが、効能の原理は全く異なります。酸素美泡湯の主役はその名の通り「泡(マイクロバブル)」です。炭酸泉の主役は泡ではなく「炭酸水(二酸化炭素の溶けたお湯)」です。
酸素美泡湯のホームページをご覧頂くと、「モイスチャー効果で、お肌しっとり長続き」「ぬるめのお湯でもしっかり温まり、湯冷めしにくい」と謳っています。
酸素美泡湯 | 機能一覧 | システムバスルーム | Panasonic
このモイスチャー(moisture : 水分)効果というのは学術用語ではないようで、調べても曖昧で良くわかりません。肌が潤っている状態を持続させる効果を指しているようですが、その原理については触れていないので、
「モイスチャー効果で、お肌しっとり長続き」=
「肌が潤っている状態を持続させる効果で、お肌しっとり長続き」
という何の説明にもなっていない宣伝文句になっています。
モイスチャー効果しかりマイナスイオンしかり、こういった定義のはっきりしないカタカナ言葉でそれっぽく見せるのはBtoC企業の性とも言うべきものですから、ここでパナソニックを責めるのはやめておきましょう。
とにかく、角質水分量の変化を測定したら、少なくとも入浴後30分は普通のお風呂に入ったときより5%くらいしっとりしていたとのことです。
このグラフの信頼性以前に、5%の水分量の多さとはどのくらいの違いなのかとか、入浴後30分にどんな意味があるかは説明されていないので、これが有用なのかどうかはわかりません。
次の「ぬるめのお湯でもしっかり温まり、湯冷めしにくい」を示すグラフも同様に、普通のお風呂に入ったときより入浴後40分での平均皮膚温度が0.25℃高いと言っても、効果が良くわかりません。一般に湯冷めしにくいと言われている半身浴のデータでも一緒に載せておけばまだイメージしやすいと思うのですが、そこまで考えが至らなかったのか、半身浴のほうがデータが良かったから伏せたのか・・・私にはわかりません。
否定ばかりしていますが、あくまで「宣伝が悪い」と言っているだけで「酸素美泡湯に効果がない」と言っているわけではありません。ネット情報では、酸素美泡湯を付けて良かったという方が大勢います。理屈をこねても、結局は実際の使用感が全てです。
マイクロバブルの優れた効果①保温性
私は、酸素美泡湯のマイクロバブルが良い効果を発揮しているのだと思っています。
泡(マイクロバブル)は気体です。熱は、固体→液体→気体の順に伝わりにくくなっていきます。
気温35℃は猛暑なのに、お風呂が35℃ではぬるいどころか冷たく感じるのは、水は熱が伝わりやすいので身体から熱をどんどん奪っていってしまうからです。
マイクロバブルが皮膚の表面に付着すると、皮膚に触れている水の面積が減少し、バブルが熱を伝えず保温の役割を示します。
熱の移動量が大きいと、身体は毛穴や血管を拡張したり収縮したりして体温を調節します。
お湯が熱いと、熱を逃がそうと毛穴や血管が拡張したままお風呂を出ることになるので、その後急速に身体の温度が下がって湯冷めしますし、汗をかいて水分を蒸発させるので肌も乾燥します。
酸素美泡湯により熱の移動量を小さくすることができるので、お風呂が出たときの毛穴や血管の拡張を抑えられ、こういった問題を改善できるのだと思います。
また、マイクロバブルによる皮膚への微弱な刺激が身体を温めてくれるという話も聞いたことがあります。
せっかくなので炭酸泉についてもお話したいと思います。
炭酸泉と聞くと肌に付着する大量の気泡のイメージがありますが、そちらはお湯に溶けていた二酸化炭素が刺激により気体になってしまったものですので、上述の酸素美泡湯と同様の効果がありますが主役ではありません。普通のお湯と見た目は変わらない炭酸水のほうが主役です。炭酸ガスの経皮吸収による血行改善を始めとした様々な優れた効果は、大学や病院、企業できちんと研究されているようです。
酸素美泡湯は空気を特殊な膜を通して加圧しており、酸素の濃度を上げた気泡を生成しますが、空気中には二酸化炭素がほとんど含まれていませんから、炭酸ガスの恩恵を受けることは出来ません。
健康への効果という面では、炭酸泉は酸素美泡湯の上位互換というイメージでしょうか。
但し、自宅に人工炭酸泉を導入するコストは、酸素美泡湯より遥かに上です。
酸素美泡湯は10~20万円ですが、こちらは40万円前後の初期投資+炭酸ガスボンベのランニングコストも馬鹿になりません。ガスボンベの交換の手間や設置場所も問題になります。
ただし、先程一例としてリンクを貼った論文によると医学的効果も認められていますし、炭酸泉は継続してこそ意味があるようですから、毎日温泉に行く手間を考えたら安いという考えもあるでしょう。
マイクロバブルの優れた効果②洗浄力
いつものようにかなり話が反れてしまったので戻しましょう。
マイクロバブルの効果として実証されているのは、保湿力よりも洗浄力です。
マイクロバブルは疎水性の汚れ(要するに油性の汚れ)を吸着しやすいという特徴があります。洗剤なしで皮脂汚れを落とすことが出来るのです。
この効果については既に広く産業利用されており、数々の文献やホームページを見つけることが出来ます。
(マイクロバブルでサイト内検索してみてください)
このように実証されているマイクロバブルの洗浄力ですが、何故か酸素美泡湯のホームページには保湿力の話しか出ていません。
一方、パナソニックのお風呂には「エステケアシャワー」というオプションもあり、こちらも酸素美泡湯同様、中身はマイクロバブルです。こちらでは洗浄力をしっかり宣伝しています。
エステケアシャワー | 機能一覧 | システムバスルーム | Panasonic
酸素美泡湯にも同等の洗浄効果があるはずですが、何故そちらではあまり宣伝しないのでしょう?
しかも酸素美泡湯は酸素濃度を高めていますから、更に洗浄効果は高いはずでは・・・?現に、酸素美泡湯を使うと湯船に皮脂汚れが浮くという意見もネット上に転がっています。
全体的にとても良い商品だと思うのですが、パナソニックの宣伝力(ホームページ作成能力)には多くの疑問が残りますね。
オシャレさというか漠然としたイメージだけで押し切ろうとしすぎではないでしょうか。
結論としては、私としてはこの酸素美泡湯、エステケアシャワー共に「見送り」という結論に至りました。
理由は「説明が不十分で半身浴や炭酸ガス系入浴剤よりも優れているのかどうかよくわからないから」です。展示場の説明員のお姉さんも、ホームページに書いてあること以上のことを話してくれませんでした。効果がいまいちイメージできないものに、大きな金額はかけられません。
洗面台&トイレ
続いて洗面台ですが、パナソニックの特徴はライン照明と有機ガラス系シンクですね。鏡に沿ってまっすぐとLED照明が通っており、見た目にお洒落です。ライン照明はお風呂にもオプションで付けることができ、パナソニックのデザイン性の高さを良く表しています。タッチレス水洗も良いですね。その他の使い勝手は特に問題なさそうです。
トイレはTOTO、LIXILに並ぶ三大メーカーですから、評判も上々で大変興味がありました。有機ガラス系の素材で出来ており、TOTOやLIXILのような陶器ではありません。
有機ガラスには賛否両論ありますが、私はトイレにおいてそこまで議論するべき点ではないように思います。上述の禁止洗剤がありますが、場所がトイレですから触れる機会はまずないでしょう。メリットである軽さや割れにくさも、私たちが日常で実感することはなさそうです。
有機ガラスの方が水垢がこびりつきにくいだとか、陶器のほうが変色しにくいだとか色々な意見がありますが、結局は一長一短で大差ないと判断しました。
パナソニックトイレの特徴は「泡」です。またまたマイクロバブルが登場します。パナソニックはこの技術に相当の自信があるようですね。
ひとつは、便器に溜まる水の上に泡のクッションを作り、尿ハネを防ぐ「ハネガード」機能です。もうひとつは、5mmのミリバブルと60μmのマイクロバブルを使って流すことで、汚れを強力に除去する「激落ちバブル」機能です。
これらは、便器横の洗剤タンクに台所用の中性洗剤を注入しておくことで使用出来ます。パナソニックオリジナルの機能で、優れた独自性と言えると思います。評判も上々ですし、手入れを極力減らそうという方向性がはっきりしていて良い商品だと思います。
以上、パナソニックの感想でした。ほとんどはお風呂の話でしたが、私的には
キッチン◎、お風呂○、洗面台○、トイレ○
という印象です。悪いところは見当たりません。キッチンは現状では一番良いと思っています。機能面でもデザイン面でも非常に優れていると感じました。
特にデザイン性の高さは噂通りの素晴らしいもので、私も妻もノックアウトしました。実際いくらになるのか非常に気になるので、ショールーム巡りがひと段落したら、パナソニックで見積もりを行うことにします。
→最終的にはびっくりするくらい高くて断念しました。