ショールーム巡り「タカラスタンダード編」
ショールーム巡り第3回は熱烈なファンがいるらしいタカラスタンダードです。「タカラスタンダード=ホーロー」というイメージの方も多いことでしょう。
目次
タカラ=ホーロー
タカラスタンダードの言うホーローとは鉄の表面にガラスを焼き付けたものです。鉄の機械的性質(丈夫さ、割れにくさ)とガラスの化学的性質(耐水性、耐汚染性)を併せ持ち、鉄とガラスなので当然火にも強いです。
ショールームへ足を運ぶと、ネットでタカラスタンダードを調べると必ず出てくる通り、真っ先にホーローの素晴らしさのアピールが始まりました。ホーローパネルをハンマーで叩いたり、ガスバーナーで炙ったりしても何も問題ありませんという実演を受けました。
ショールームを軽く一周して思ったことですが、キッチン、洗面台、お風呂、トイレパネルに至るまで、本当に全て「ホーロー」が売りでした。クリナップのステンレス押しを遥かに凌ぐ全力押しです。順を追って説明していきます。
まずキッチンですが、ワークトップと骨組み、シンク以外はホーローです。キッチン下収納、パネル、キッチン周りの壁がホーローのため、傷に対して非常に強く、磁石を貼り付けられるのも大きな利点です。
ワークトップはアクリル人造大理石と人造大理石に別れており、表現から考えるに人造大理石のほうはポリエステル系人造大理石、アクリル人造大理石がアクリル系人造大理石なのでしょう。一般に、ポリエステル系の人造大理石よりもアクリル系の人造大理石のほうが、耐熱性や耐候性において優れているそうです。
最上クラス「レミュー」には「高級人造石クォーツストーン」も用意されています。人工大理石に比べるとやはり高級感があり、他社にはない大きな魅力の一つです。クリナップのステンレス以上にホーロー+クォーツストーンはオリジナリティが高いので、収納がどうとかお手入れがどうとかいった話以前に十分個性を演出できています。
かといってレンジフードやシンクの使い勝手が悪い訳でもなく、むしろネットの評判を見る限りではかなり良いですね。実際に見ましたが、レンジフードは部品の取り外しが簡単で、パーツの数が少なく、手入れは楽そうでした。
次にお風呂ですが、ホーロー、ステンレス、FRP、アクリル人造大理石と何でも揃っています。それぞれの素材の特徴については、ショールーム巡りがひと段落したらまとめようと思います。このラインナップの中でも一押しはやはりホーローで、滑らかな肌触り、汚れに対する強さ、光沢感は他を圧倒しているとの話でした。
洗面台もやはりホーローです。キッチンと異なり、ボウル部分もアクリル人造大理石と人造大理石とホーローから選択できるので、全てのパーツをホーローに出来ます。
OEMだがトイレが良い
トイレの展示もありましたが、話を聞くに自社製品ではなくOEMですね。家に帰ってから調べてみると、ジャニス工業製でした。このトイレ、私的には今までで1位でした。
IR情報:タカラスタンダード株式会社との取引開始に関するお知らせ
http://www.janis-kogyo.co.jp/aboutus/ir/080201ts.pdf
ジャニス工業はトイレの大手3社(TOTO、LIXIL、Panasonic)に次ぐ第4位のメーカーで、このうちPanasonicは陶器メーカーではないので、衛生陶器メーカーという括りでは第3位のメーカーです。このトイレの素晴らしい点はフチなし形状「フロントスリム」で、手入れが本当に楽そうでした。
トイレ掃除をしていて一番イライラするのはフチ部分ですよね。このフチが存在しません。ビッグ3と比較して企業規模もシェアも圧倒的に小さいので調べても使用感の情報がほとんど得られない点が少し不安ですが、手入れのしやすさでは今のところNo.1ではないかと感じました。
調べていくと賢者の選択という番組でピックアップされたことがあったらしく、このフロントスリムについて紹介されています。
トイレ掃除のCMでも良く耳にしますが、男性が立って小をすると尿が飛び散ります。私はそれが嫌なのでいつも座るようにしていますが、賢者の選択の対談を見るにフロントスリムの着想は座って小をする男性が多いというアンケート結果から得たようなので、私個人の使用方法を考えても通常のトイレよりこちらのほうが良いのではないかと感じました。
ジャニス工業のトイレの話ばかりしてしまいましたが、タカラスタンダードのOEM特有の利点もあります。トイレ周りのホーロー壁です。これはジャニス工業のトイレで男性が立って小用を足す際の尿ハネに対応しようという考えでしょう。
総評
全体を通したデザインですが、うっすらと描かれた草花等の他社では中々見られない昭和っぽい柄が目立ちましたが、上位モデルでは高級感のあるモダンなデザインもありました。昭和柄はあくまで一部だったのですが、何故かホームページでも展示場でもこういった古いデザインを全面に押し出しているので、ネット上に書かれているように「タカラ=デザインが古い」という印象になるのではないかと思いました。
私達もショールームのお風呂に富士山が描かれているのを見て昭和の銭湯を感じました・・・が、現在各地のショールームの中身を順番に入れ換えているそうで、浜松ショールームも2016年9月にお風呂を刷新するそうです(この記事がアップされた時点ではとっくに刷新済みですね)。顧客の声に対応してお洒落なショールームに変わっていくのかもしれませんね。
結局、タカラスタンダードにするかどうかはホーローが良いかどうかに懸かっています。結論から言うと、私はホーローは不要という判断に至りました。
まずお風呂ですが、私は2階にお風呂を設置するので、そもそも重量があるホーロー製のお風呂は耐荷重的に不安です。そのうえ、ホーローというのは表面にガラスコートをした鉄なので、ガラスコートに何らかの問題が発生して鉄が空気と触れるようになった時点で錆び始めます。しかも、修理においてはガラスの優れた耐薬品性、耐汚染性が仇となり、補修剤が容易に剥がれてしまうでしょう。更に錆を放っておくと、腐食して穴が開きます。2階のお風呂に穴が開いて水漏れでもしたら・・・怖くて考えたくもありません。
仕方なく交換となった際も重いので費用が嵩むでしょう。当然、タカラスタンダードは大手中の大手メーカーなので、ガラスコートの不備やちょっと強く擦っただけで傷がつくということはまずないでしょう。それでも、いくつかの不安を呑み込んでまでホーロー風呂を選択する理由は見つかりませんでした。
洗面台は、敢えてホーローにする理由が見当たりませんでした。洗面台の側面やボウルの汚れが、取れない程ひどくなった記憶がないからです。
キッチンについても、洗面台同様にホーローにする理由が見当たりませんでした。「パネルや壁だけホーローでどうする」という思いが拭えません。磁石が貼りつくだけではキッチンの採用理由として弱いです(そもそもタカラでホーローの内壁材を売っていますから、磁石をつけたい壁だけそれにすればOK)。キッチン下パネルや壁をたわしでゴシゴシ洗うことも中々無いでしょう。
ワークトップやシンクまでホーローだったら話は別でした。ステンレスより見た目がお洒落で水垢も付かず、人工大理石より光沢があって熱にも傷にも強い・・・素晴らしい素材です。ホーローシンクではホーローが硬すぎてガラス食器を落としたら簡単に割れるとか、ガラスコートが割れて錆びるといった問題がありますが、それを克服してこそのホーロー押しではないでしょうか。
シンクには食器割れ防止用の透明でお手入れ簡単なゴムマットを付けるというのはどうでしょう。ガラスコートの割れについては、既にハンマーでバンバン叩いて強さを実証している訳ですから、既に解決しているのではないでしょうか?
洗面台をオールホーローで謳っているのに、メインのキッチンがオールホーローに出来ない点がどうしても気になります。惜しいです。
非常に良いと思ったのは意外にもトイレでした。手入れのしやすさが素晴らしいです。実際に使ってみるとどうなのかはわかりませんが、「使ってみたい」と強く思いました。タカラスタンダード製ではないんですが…笑