住宅設備メーカー比較「キッチン編」
今までにクリナップ、LIXIL、タカラスタンダード、パナソニック、トクラス、TOTO、ハウステックの7社のショールームに足を運び、色々と話を聞いて調べてきました。この経験から、第一回メーカー比較はキッチンで行おうと思います。
目次
キッチンは住宅設備の主役
一番気にしていたのもあってか、メーカーの差が最も如実に現れているのはキッチンだと感じました。
キッチンは、
- 最も存在感がある大型住宅設備=デザインが重要
- 水周り設備なので清潔にしておかないと悪臭の原因に=お手入れが重要
という機能性と外観の両面に気を配らなければなりません。
基本的にはどのメーカーもコストに合わせてラインナップを揃えているので、ハイグレードとミドルグレードの商品を比較しても意味がありません。本来であればオプションを含めて同価格での仕様を比較したいのですが、価格はハウスメーカーによって割引率が異なるため、現実的に難しいです。
レンジフードの掃除の手間を省く、水道をタッチセンサーにする、収納を少しでも増やす、といった細かいオプションはどのメーカーも用意しているので、結局その点ではあまり差別化出来ていません。
そこで、私としては各メーカーのちゃんと差別化出来ている点のみで評価していきたいと思います。
「このメーカーのこの機能が欲しい!気に入った!」
というものがあれば、少々の価格差を無視してでもそのメーカーで決めたほうが幸せだと思います。
それでは、意思決定のしやすいメーカーから順に紹介していきましょう。心に響かなかったら次のメーカーの紹介へ、という気持ちで読んで頂けると良いかと思います。
①素材の個性が光る2社
まずは素材で差別化に成功している2社から紹介していきます。これらの素材に魅力を感じている場合は、それだけでメーカーの決定理由になり得ます。
1社目は「タカラスタンダード」です。言わずもがな、ホーローですね。
火で炙って良し、ハンマーで叩いて良し、マジックで落書きして良し、タワシでガシガシ洗って良し、磁石を付けて良し、というホーロー製に魅力を感じている方にとっては、タカラスタンダードが唯一の選択肢です。とにかく一度ショールームでホーローに触れて、それに大きな魅力を感じるのであれば即決定で良いのではないでしょうか。そのくらい、タカラスタンダードの個性はホーローに集約されています。
ただし、ホーローの傷にも汚れにも強いというメリットはキッチン周りの壁や収納部分に活かされており、キッチンシンク・ワークトップ・コンロ部分といった食材を落としたりや液を零したりすることが最も多い上面部分はホーローではないので、承知しておいてください。
上面はステンレスと人工大理石の2択です(最上位モデルであればワークトップにクォーツストーンを選ぶこともできます)。
タカラスタンダードは非常に評判の良いレンジフードやシンクデザインを有していますので、素材以外の面にもしっかり気を配っています。
もう1社は「クリナップ」です。クリナップといえばステンレスです。
クリナップのステンレスは「18-8ステンレス」という素材を採用し、表面形状にも工夫を施しているため、他社とは一線を画していると言います。
18-8ステンレスという呼び名よりも、「SUS304」と言われたほうがピンと来る方も多いのではないでしょうか。クリナップのホームページには「ステンレスの中でも特に優れている」という表記がありますが、世に流通している最も一般的なステンレスです。
こういった食品業界では、「18ステンレス(SUS430)」というより安価なステンレスも良く使用されるそうです(私の職業ではSUSといえば303, 304, 316, 403がメジャーで、430は良く知りませんでした)。
18-8ステンレスは、18ステンレスより錆びにくい、磁石がくっつかないという違いがあります。
他社のステンレスがどちらなのか(私がステンレス素材を候補として考えていなかったので)知りませんが、各社で「磁石はくっつくんですか?」と聞けばわかるはずです。
磁石がくっつく=安価な18ステンレス
磁石がくっつかない=高価な18-8ステンレス
ということでしょう。ショールームに磁石を持って行って確かめるのが手っ取り早いかもしれませんね。
ステンレスの最大の欠点は「傷が目立つこと」ですが、クリナップではステンレスに凹凸形状を施すことで傷を目立たなくしています。
熱や汚れに対する強さという面では、最近流行りの「人工大理石」よりも依然として優れていますし、高級ワークトップ素材である「セラミックス」や「クォーツストーン」は価格以外にも重いという欠点を抱えていますから、すべての素材の中で最もキッチンに向いているのはステンレスであると言って良いでしょう。だからこそ、飲食店の厨房は殆どの場所でステンレスを採用しています。
しかしデザインの面では、最近流行りの「見せるキッチン」に対して大きなマイナス面を持っています。ステンレスの光沢、無機質感がインテリアとしてリビング全体とマッチしないのです。こういった点から我が家のようにステンレスを敬遠する人も多いかと思います。
しかし、お店の厨房のようなキッチンに憧れている方、本気で料理をしたい方にとってクリナップのステンレスキッチンは魅力的な商品と言えます。
また、クリナップは自動掃除のレンジフードの評判も大変良いです。
②機能の個性が光る2社
機能面で他社との差別化に成功しているメーカーもあります。
1社目は「TOTO」です。もともと衛生陶器(トイレ)メーカーだけあって、水周りの清潔に対して強いこだわりを持っています。
TOTOの特徴といえば、「すべり台シンク」「水ほうき水栓」「きれい除菌水」の3つでしょう。それぞれ特徴的なシンク形状、水栓形状をしているため、外観にも影響を与えています。
すべり台シンクのコンセプトは他社と同じで「水の流れを良くしてゴミをスムーズに排水口まで流そう」です。そのために溝を作ったり撥水性を良くしたりするのではなく、シンクそのものに傾斜をつけてしまう大胆さは衛生陶器メーカーならではです。「シンクは食器を置く場所ではなく、汚れを流す場所である」というメッセージのようなものを感じます。コップや背の高い食器を重ね置きしたら倒れやすいのでは?という不安がありましたが、実物を見てみるとそこまで急な傾斜ではありませんでした。気になる方は実物をご覧になったほうが良いと思います。
水ほうき水栓もコンセプトは他社と同じで「水の使用量を少なくする(エコ)」です。他社と異なる点は洗い物のスムーズさ、水はねの軽減も視野に入れていることです。水はねは水垢に繋がりますから、水周りをきれいに保つ上では水はねの抑制も重要という考えでしょうか。
きれい除菌水はTOTO最大の特徴ではないでしょうか。他社にはない「除菌」というコンセプトを持っています。トイレで培ったノウハウを活かし、「洗剤で洗っているけど本当にきれいになっているのか?」という不安に応えた商品です。除菌においては長年研究を重ねているメーカーとしての自信もあるようで、きれい除菌水のホームページには米印が7個もついており、試験内容や試験機関に関する情報を提示しています。
これらの機能に強い魅力を感じた方にとって、TOTO以外は考えられないでしょう。「トイレメーカー」というイメージで敬遠している方もいるかも知れませんが、是非一度ショールームに足を運んで、そのイメージを払拭して頂ければと思います。
もう一社は「パナソニック」です。住宅設備メーカーではなく家電メーカーであるという個性を活かした商品を提供しています。
「トリプルワイドIH」「クッキングコンセント」「エコナビ」「LEDライン照明」「ほっとくリーンフード」「まな板キレイ乾燥機」「スリムセンサー水栓」といった電化製品部分の個性が強く、結果としてTOTO同様に特徴的な外観を有しています。特にスリムセンサー水栓はボタンが何やら多く見えて、水栓というより家電だという印象を受けやすいデザインです。トリプルワイドIHはコンロの手前スペースを確保したり、魚焼きグリルが無かったりといった他社にはない大きな特徴を有しています。私はこれに魅力を感じました。
熾烈な家電製品の開発競争で培ったデザイン力を存分に発揮し、外観面での他社との差別化が非常に上手にできている印象を受けます。住宅設備メーカーのキッチンからは「暖かい」「明るい」「清潔」といった実際に家族の団らんの中でキッチンに立っているイメージを受けやすいのですが、パナソニックのキッチンは「スマート」「クリア」「スリム」といったオシャレな大人の集まりの中でキッチンに立っているイメージを受けました。デザインに一目惚れする人も多いと聞きますので、ショールームに足を運ぶ価値ありです。
③個性を演出しつつも王道を行く2社
続いて、必要な機能は全てハイグレードに揃えつつ、デザインや素材などちょっとしたところでしっかり個性を演出している2社を紹介します。
1社目は「トクラス」です。元YAMAHA系列として表面塗装技術が優れているだけでなく、人工大理石のワークトップに対しても一日の長があります。
そもそもトクラスは「国内で最初に人造大理石カウンターのキッチンを開発したメーカー」として、人工大理石という素材そのものに大きな特徴を持っていました。しかし時代の流れでワークトップの主流がステンレスから人工大理石に置き換えられる中で、各社でも人工大理石の開発を積極的に行うようになったことや、海外にあるデュポンコーリアンという超大手の人工大理石を採用できるメーカーが多く現れたことにより、個性が少し潰されてしまった感じです。とはいえ、国内における先駆者としての優位性は未だに確保していると言われており、トクラスの人工大理石は他社製よりも熱にも衝撃にも強いそうです。また厚みもあるため、もし色移りや傷が出来てしまっても研磨していけば他社製よりもずっと長く美しい状態を保てると言います。
扉材のカラーが非常に豊富で、塗装は光沢があって高級感を上手く演出できている点もトクラスの特徴でしょうか。手塗りグレードと呼ばれる最高ランクの商品はグランドピアノのような高級感と重厚感があります。
このように、一見同じに見える素材でも性能が高いところや、カラーの豊富さでオリジナリティを出しやすいところがトクラスの特徴です。今流行りの人工大理石キッチンが良くて、品質も良いほうが嬉しくて、キッチンで個性も演出したいという方は非常に多いと思います。それでいて、パナソニックやTOTOのような個性的な機能は別に要らないかな?と感じた方にとって、トクラスは一見の価値があるでしょう。
トクラスは人気こそマイナーですが、中身は「王道」寄りだと思います。
もう1社は「LIIXIL」です。シェアNo.1、この業界の覇者です。私が「王道」とか「一般的」と言っている基準はこのメーカーになります。
このメーカーの特徴は、何でも揃っているところです。オプションも豊富で、基本的に出来ないことがありません。まるでテニスのジョコビッチのように、全ての要素がハイレベルであり、隙がありません。だからこそ王者なのです。唯一欠点があるとすれば、あまりにも王道過ぎて面白みに欠けることでしょうか。と言ってもセラミックカウンターという他社にない新素材のワークトップ商品も販売していますし、扉材のカラーも豊富なのでそこで個性を演出することも出来ます。
上述したメーカーでどこもビビッと来なければLIXILが良いかも知れませんし、LIXILのショールームに言って、満足できそうなら決定で良いかも知れません。LIXILはとにかく完成し過ぎていて、ショールームへ行ったほうが良い以外に書くことが見当たりませんね笑 LIXILはショールームに非常に力を入れているので、一気にイメージが膨らむと思います。
④ハウステック
最後は「ハウステック」です。これだけ別枠を用意しました。ここは、上述の6社とは全く異なる特徴を有しています。
ハウステックの機能的・外観的特徴はありません。一見すると「選択肢が少ないLIXIL」です。ハウステックのデザインが気に入るということはあるかも知れませんが、他社に比べて個性の表現は不十分なように感じます。といっても不足があるわけではなく、人工大理石のカラーや扉材のデザインの種類も用意されていますし、タッチレス水栓や手入れがほとんど要らないレンジフード等、他社同等の必要な機能は揃えています。
しかし、「同じ予算で」考えたとき、ハウステックは全体的に低価格であるため、「フルオプションの現実味」というメリットが考えられます。現実的な問題として、他社の特徴的なオプションを入れつつ、細かいところまで満足のいく仕様に出来るかというと、予算的に厳しい場合が大半でしょう。
「きれい除菌水を導入したい」→「クリスタルカウンターは諦める」
「トリプルワイドIHにしたい」→「ほっとくリーンフードは諦める」
「セラミックトップにしたい」→「ハンズフリー水栓は諦める」
といった感じでしょうか。
例え総合力が高いメーカーを選んだとしても、全てのパーツを高性能で揃えることは難しいでしょう。
他社ではほとんどの項目で満点や90点を取れる一方、コスト的に妥協したいくつかの項目は60点、70点くらいになってしまいます。それに対して、同様のコストで全項目80点を取れるのがハウステックです。
「優れた機能に満足を感じて幸せになるタイプ」か、「不十分な機能に不満を感じて不幸せになるタイプ」かは人に依りますが、後者の人は上述各社のミドルグレードよりもハウステックのハイグレードモデルのほうが良いと思います。価格的にもおそらく大差ないはずです。
そのうち記事にしますが、私はハウステックを選びました。オプション盛り盛りどころか、ハイバックカウンターの形状を特注にしたり、サイドカウンターを特注で追加したり、やりたい放題しました。それでも、パナソニックのL-Classキッチンの追加オプションほぼなしモデルと同等の価格でした。
以上で私なりのキッチン比較は終了です。少しでも皆様の参考にして頂ければ幸いです。次回はお風呂で比較していきたいと思います!