『個性』と言って本質を見ようとしない風潮
花王ロリエの「生理を“個性”ととらえれば…」というメッセージに批判が殺到してニュースになっているようですね。
近年は個性という便利な言葉が乱用されていますが、良くない風潮に感じます。
~一昔前~
①個性的な顔!味がある!!
↓
②勉強できなかったり運動できなかったりは個性!良いところを見つけて伸ばそう!!
↓
~最近~
③じっとしていられなかったり怒りっぽかったりも個性!認めてあげよう!!
↓
④障害も個性!『認め合おう』!!
↓ (new)
⑤生理の『個人差』を個性と捉えよう!
こんな変化を感じませんか。
終始疑問に思うのは、当人の気持ち=本質が抜けているっぽいところです。
①個性的な顔
→ 無関係な他人目線
・各自の勝手な普通のイメージと比較して無責任に言っているだけ
・基本的に悪い意味で使われていた印象
・当人はそう思っていないかもしれないし、逆に誇りに感じているかもしれない
・余計なお世話。
②勉強、運動できないのは個性
→ 関係する大人(親、教師)目線
・勝手に子どもの能力を断定する
・当人は貼られたレッテルで
「自分は勉強が出来ないんだ」→勉強嫌い→テストで点数が悪くなる→「自分は…」
という負のスパイラルに陥りかねない。
・『長所を伸ばそう!』教育の弊害だと思う
・当人は暗記が不得意だけど歴史は大好きという可能性だってある。運動神経は良いけど体を動かすのは好きじゃないかもしれない。
③欠点も個性
→ 関係者(クラスメイト等を含む)目線
・②から対象を拡大して、当人の同年代にも個性を尊重するよう教育
・当人がどうとかは関係なく、周囲が寛容になろうという側面がより強くなる
・当人の良いところを見つけてあげようという視点すら無くなった
④障害も個性
→ 関係する他人目線(本来は医者目線)
・カウンセリングの世界から一般へと広がっておかしくなったように感じる
・障害を持つ当人の精神的な苦しみを開放するために医者が言うのならわかる(視点を変えるきっかけになる良い表現だと思う)
・しかし、この表現はフォローが何より大事だと思う。
「じゃあこれからどうしていこうか」という話が続かなくてはならない。
・しかし一般では問題に正面から向き合わないための逃げの表現として使われているように感じる(フォローがないから)
・例えば、ADHDで苦しんでいる人の周囲に対して、
「ADHDは個性だから、物忘れが激しかったり急にイライラしたりしても当人を責めないように!」
「それに当人が自分自身を責めないように配慮してあげよう」
当人には、
「良いよ。個性だよ。気にしないで」
これで解決できるとは限らない(というか大半は解決できないと思う)
・当人は
「大事な約束を忘れたくない」
「どうにかしたい」
と強く思っているかもしれない
・『"個性"という優しい言葉を投げかけて、寛容な態度を見せて、後は放置』。こんなことをするから個性という言葉が駄目になっていく。
⑤生理(体調)も個性
→ 誰目線?
・個性と捉えれば他人の生理休暇にイライラしなくなる?今まで見えなかったことに気がつけたり、そっとフォローしあえたり、もっと気持ちよく助け合える?何故その結論に至れるのか。
・個性って何なの?というレベルまで抽象化している。
・相変わらず当人の気持ちは迷子。
当人は「生理が重いので休みます」が当たり前に認められるようになってほしいのか?
ツラくても何か出来ることを探して働くほうが精神的に楽な人もいるかもしれない
もしくは「重い生理が何かの病気につながっていないか」という不安を取り除きたいのかもしれない
いや根本的に、このツライ生理を少しでも軽くすることを切望しているのかもしれない
・誰目線か分からないことが自分勝手な印象を抱かせ、批判の対象になっているように思う。
結局、
「個性を尊重」
「個性として認める」
等というのは言葉遊びみたいなもので、
視点を変えるきっかけにはなっても問題を解決するわけではない場合が大半
だと思います。
もちろん視点を変えることは物凄く重要なんですが、「個性を認め合えば全ての問題は解決します!」なんてのは詐欺そのものです。
花王ロリエのこのプロジェクトは、アンケートに答えていくと自分の生理(個性)の形が天然石として表示されたり、社員72人のアンケート結果を閲覧出来るってもののようです(2020/8/25現在)。
個人個人の生理に対する向き合い方をプラス方向に変えたいってものらしいんですが…?
これ顧客ターゲットは「生理でツライ思いをしている側」ですよね。
つまり「生理は個性」は「当人目線」ということ?
当人目線なら、公式ホームページに記載されている
「今まで見えなかったことに気がつけたり、
そっとフォローしあえたり、
私たちはもっと気持ちよく 助け合えるはずだから。」
のうち、一行目には効果があるかもしれませんが、2、3行目はどうやって実現するんでしょう?
生理がツラくない側に響く手段はどこに?
そちら側に「生理は"個性"」と認識してもらうにはどうしていくんでしょう?
企業を訪問して教育するとか、
セミナーを開くとか、
「上司向け」の相談窓口をWEB上に設けるとか、
「ツライ側」の思いを会社上層部に伝えるためのパイプ役になるとか、
生理ハラスメントを根絶するコミュニティなんかを作って企業に参画を求めるとか…
やりようはいくらでもあると思うんですが、これから動き始めるんでしょうか?
現状では顧客の問題を解決できないように思いますが、このプロジェクトの今後の取り組みに注目です。